平成12年資源動物科卒   佐藤 麻耶さん

 皆さん、はじめまして。

2000年農芸高校卒業生の佐藤麻耶と申します。

現在は、乳牛専門の削蹄所を立ち上げて、2023年1月で創業15年となりました。

会社名は【株】G’dayHoofCare グッデイホフケア。

私は代表取締役を務めて、社員4名(経理1名含む)で年間削蹄頭数約2万頭となります。

私が在学中を知っている人は、この話を聞いて、みんな驚愕していることでしょう笑

高校時代の私は、わがままで、とにかく好きなことをやり通して、周りに迷惑をかけるような生徒だったと思います。

1年生の時は、ふれあい動物部に属して、ウサギを好きになり、繁殖プロジェクトを同級生と組んで、その時に産まれたウサギを8年間飼っていました。2~3年の時は、私の更生のために可愛がってくれた先生が担当する総合環境部に配属しました。今、大人になって自分を分析すると、有り余っている体力とフラストレーションの捌け口がなくて、腐っていたのだと思います。その先生は、ちゃんと理解してくれていて、私が熱くなる物を探して、今まで全然勉強してこなかった私ですが、海外留学という目標が見つかり、英語を毎日するようになりました。

元々、卒業後は就職と決めていたのですが、何も決まっていない状態の3年の時に、60日間オーストラリアに留学して周りを驚かせました笑。

そして、運命だったのだと思います。私のホストファミリーは、肉牛を肥育している牧場でした。広大な土地に、ペットに馬2頭と放牧犬3頭、室内犬+猫4頭に囲まれて、これまでの私の人生の中で、一番開放的で刺激的でした。悩むのは時間の無駄だな~。こんな素敵な世界があるなら、どんどん自分から突き進んで生きていかなければ損だと学びました。

帰国後、小さい頃からの夢だった動物園勤務のため、当時1社だけ求人に出ていた動物商の会社に就職しました。動物商とは、海外から希少動物を輸入して、国内の動物園やペットショップに卸す会社で、販売が決まるまで飼育したり、小動物の繁殖をします。

最初の1年間は徳島県の動物園に出向で臨時職員として勤めました。

私の40年間の人生において、いくつかのターニングポイントがあります。

1つ目は、普通科の高校を受験する予定だった私に、好きな動物と接する事が出来るからと、農芸高校を紹介してくれた中学の時の担任。2つ目は、ふらついている私を軌道修正してくれた農芸高校の先生。3つ目は、動物園で出会った主任。

動物が好きというだけで、現実の厳しさに負けて、逃げようとした時に、動物園の主任から乳牛の牧場を紹介してもらいました。高校時代に牛と触れ合っていたので、すぐに牧場に飛び込みました。のちに、牧場に面接兼引っ越し準備してくる子は滅多にいないし、気合を感じたから即採用したと社長から聞きました。怖いものなしで、興味のある世界に飛び込むのは、高校時代に育てて貰えたと思っています。

その牧場で、餌設計以外の業務をやらせて頂いて、入社時より頭数も倍に増えそうになり、後輩も育っていたので、次の世界へ進もうと決意。ステップアップの為に求職していたら、牧場で出会った繁殖専門の獣医さんに、削蹄師の世界を紹介してもらいました。ターニングポイント4つ目は、この獣医さん。

牧場で勤めていた時の削蹄師さんはナタ鎌の削蹄で、筋肉の塊。完全な男社会に見えていて、全く興味を持っていませんでした。しかし、獣医さんに紹介してもらった削蹄師さんの所に見学行ったら、私より背が低くて、中肉中背。そして軽快なステップで牛達を誘導して、スピーディーで無駄な動作のない電動器具を使用した削蹄を見て、その場で弟子入りを懇願しました。ターニングポイント5つ目ですね。(ターニングポイントって、そんなに一杯あって良いのか?謎だが、全て大事な出会い)

その当時は、女性削蹄の話がなくて、師匠から採用の返答がなくて、雇用を相当悩まれていたようでした。私は大阪で、師匠は山梨で遠方でしたが、何度か師匠に電話して、ダメだったら、すぐクビにしても良いから、とにかく1回雇って欲しいと、しつこく懇願して採用してもらいました。そこからは、あっという間でした。全てが新しいことの吸収。

ヨーロッパやアメリカに技術向上の為に、コロナ渦になる前は、毎年海外に研修に行きました。技術の習得は難しいけれど、とても楽しい世界で、そう思わせてくれる師匠の教えがあったと、自分が経営者となった時に感じました。

我々の仕事は、正しいのかどうかは牛が簡単に結果として出してくれます。しかし、牛とは会話できないので、我々はデータを集計して、その牧場の特性や欠点があれば一緒に解決するように牧場主と話し合いを繰り返します。牛の為を一番に掲げて、牛を良くすることで、牧場の人たちの楽になり、幸せになり、その結果が我々に幸や富が返ってくると信じています。

先述通り、起業して15年が経ち、現在は社員たちの育成に邁進する日々ですが、これまでの私の人生は、多くの人たちとの出会いがキーポイントになっています。これからの時代を生き抜く若い人達とは経済情勢も違うし、ジェネレーションギャップもあるけれど、好奇心を持ってもらえるように、削蹄というニッチな世界を知ってもらう事。どんな事でも、世界は広いから、出来ないことは何も無い!と背中を押してあげられる大人でいたいなと思っております。

会社名(グッデイホフケア)で検索すれば、facebook/Instagram/TikTok/Twitter

出てきます。会社HPはgdayhoofcare.amebaownd.com

私も、まだまだ未熟なところがありますが、後輩たちにニッチな世界を紹介することは出来ます。年3回農芸高校の牛達の定期削蹄で伺っているので、その時に気軽に声かけください。もし、見た目が怖くて声かけづらかったらDMください笑

 

 

 

 

 

佐藤さんによる削蹄作業の風景